妻が糖尿になりまして
全てを終えて病院を出たのは、夜九時過ぎでした。
4歳の娘のまりは、車の中で寝てしまいました。さすがに疲れたのでしょう。
アパートの静まりかえった部屋には、おびただしい血痕が残ったままになっていましたが、全て乾いてしまっていて、時間の経過を感じさせました。
完全に殺人現場だ……。
なかなか落ちない血をぞうきんで拭きながら、不安に耐えて倒れていた妻の心細さを感じました。
金ない・親戚ない・友達ないのナイナイづくしの解決法は、妻と相談した結果、
結局、妻のお義母さんに助けてもらうしかありませんでした。
あまり迷惑をかけたくありませんでしたが、どうしようもありません。
お義母さんの習い事も、病院の予約も全てキャンセルしてもらう事になります。
新幹線を乗り継いで5時間はかかります。明日の朝一番で来てくれる事になり、昼頃到着の予定です。
私の都会に残る決断は、いろいろな人を振り回してしまいます。
今回はたまたま親が来てもらえたからいいものの、もし、ダメだったら、生活が完全に破綻してしまうところです。
#6 やさしいママ友
そんな中、幼稚園の事を何も知らないお義母さんが、幼稚園バスのところに娘を送り迎えにいくと、事情を知ったママ達は、いろいろと幼稚園の事を教えてくれたり、持ち物のアドバイスをしてくれたり、時には少しの時間子供と公園で遊んでくれたりしてくれました。しかも、みなさん交代で!
本当に助かりました。ママ友って正直怖いイメージがあるのですが、同年代の子供を持つ親として、何が一番困っているのかわかってくれる存在で、とても頼りになるものでした。困ったときはお互い様と言ってくれる気持ちが本当に心にしみました。
「切迫流産」入院中
昼、お義母さんは、バスで病院に行き、妻の相手をしてもらいました。夕方、幼稚園からもどる子供を観てもらい、掃除、洗濯、おまけにご飯も作ってもらいました。そんな毎日が一ヶ月続きました。
お義母さんには感謝しかありません。
私といえば、相変わらず。昼間介護職、夜はアルバイトの生活です。そんな私をどう観ていたのでしょう。娘さんをを幸せにしますと頭をさげた自分としては、穴があったら入りたい一ヶ月でした。
一方、妻は、いつものストレスをあまり感じる事無く、お義母さんも横にいて話し相手になってくれたし、結婚生活で、一番幸せだったのは、「切迫流産」で入院した一ヶ月だけだったと断言します。さみしいかぎりです。
糖尿病の種類
前にも説明した「妊娠糖尿病」は、妊娠期に糖尿病に近い症状がでる病気です。妻が入院中は、それ相当の病院食が出され、規則正しく生活しています。それで、妻は安定しているようでした。
じつは、私は妻が糖尿病になるまでは、ある意味「糖尿病」に偏見を持ってしまっていました。糖尿病は、イメージだけで、「ぜいたく病」だと。
しかし、それは間違っていることを学びました。
ここで、あらためて、糖尿病に誤解を持っている方もいるかもしれませんので簡単にご説明します。
糖尿病には「1型」と「2型」があります。
「1型」は膵臓のインスリンを出す細胞が壊されてしまう完全な病気で、めちゃめちゃ痩せてるにに糖尿病?という人はだいたい「1型」です。体のインスリンが足りなくなるので、治療法はインスリンの注射が必要になってきます。
「2型」は、運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣に加えて、遺伝的な要因がある場合に発症すると考えられている型です。糖尿病の95%は2型であると言われてきます。
治療法は、必ずインスリン注射だけというわけでは無く、軽度であれば、生活習慣で血糖値をコントロールする事もできます。うまく生活できれば、注射はもちろん薬も飲まなくても場合もあります。
もちろん妻は2型です。しかし、2型もはっきりとした原因は不明なのです。遺伝的な要因か、生活習慣かは断定はできないものなので、ぜいたく病とひとくくりにできる病気では決してありません。
糖尿病=ぜいたくの偏見は捨てるべきだと思います。
妻にしてみれば、私なんかと結婚して、貧乏暇なしで、なんのぜいたくもしてないのに、ぜいたく病と言われ、うまいもの一つも食べずに糖尿病になった!と私を責めます。
1型も2型も、完治が難しいのは同じです。旅行にいって、美味しい店にいっても、食べることに対する罪悪感から逃れられないと、涙をながします。それを言われると私も家族も胸が苦しくなります。
妊娠後期
お義母さんの助けや、ママ友達の協力で、なんとかピンチを乗り越えました。
結局、絶対に「家族だけで子育ては出来ない」という事を、思い知らされた出来事です。
友達がいないなんて言っていられません。家族の死活問題です。
近所のゴミ掃除や、公園掃除。地域のお祭りや子供会等、私は出来る限り参加したくない人間なのですが、そういうわけにはいかないと教えられました。協力し、ピンチの時は少しでも助けてもらえる環境を作るのは、本当に大事なことです。身にしみました。
さて、その後、幼稚園も夏休みに入り、貧乏でとくに習い事もしていないうちは、妻と娘だけはやばやと実家に帰省して、のんびりしたようです。
その間、定期検診の病院には行きませんでした。とにかく、できる限り実家でのんびりして、帰って来ました。
そして、その事が新たなる問題の火種となってしまうのです。
逆子問題
帰省している間に、逆子になってしまっていたのです。
逆子とは、お腹の中にいる赤ちゃんの位置が、本来の頭が下ではなく、
お尻、または足の方が下(子宮口の向き)になっている状態です。
体操や、お灸などで治すこともあるそうなのですが、うちの赤ちゃんは、かなりがんこものでピクリともしません。
妊娠後期に、帰省して病院に行かなかったので、体操では戻らないレベルになってしまっていたそうです。このまま出産する事は、大変危険な事だと言われます。このまま戻らない場合は、お腹を切って赤ちゃんを出す、帝王切開しかありません。
普通分娩の費用
妻の場合一人目は自然分娩で出産しています。じつは、普通分娩は保険が適用されない自由診療にあたるので、インフルエンザの予防接種と同じで、病院側が自由に設定できるものなのだそうです。知りませんでした。みんな同じかと思っていました。
帝王切開の費用
じつは、帝王切開は保険の対象になりますので、かかった費用の3割負担ですみます。分娩費用だけの比較だと、帝王切開の方が安く済むのです。
なぜ逆子になるのか
逆子になる理由は、子宮や胎盤の異常や、骨盤の幅などがあるそうですが、田舎の実家の近くに住んでいた頃の妻の一人目の出産は、普通分娩でしたので、あまりそれらの原因にはあてはまらないのかもしれません。問題は、緊張感からくるお腹のはりかもしれません。おそらくストレスです。お義母さんが帰ってから、また戦争のような日々が続いたのが原因なんじゃないかと私は思います。これも私のせいなのです。
正常な位置にはもどらず
切迫流産のあの状況でしがみついていた胎児は、がんこものでした。常にストレスにさらされた妊娠期間の結論は帝王切開なのかもしれません。そして、病院側の予定で子供の誕生日が決まることになりました。
しかし、私が、自然分娩と同じ感覚でいた中、妻に一生言い続けてやる!と言われる大きな間違いをやらかす事となるのでした。
つづく
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。こうなるまでの課程も記事になっていますので読んでいただければ、幸いです。