こんにちは NANDEMO編集部 あまたつです!
どんな人にも多かれ少なかれ悩みがあります。悩みの大きさに絶望してしまう人もいるでしょう。
落ち込んでいる時に、頑張ってとか、希望を持ちなよ、とか、そういう言葉を言われても、励ましてくれた人には申し訳ないですが、あまり心に響かないことが多いと思います。
そんな時、こう言ってあげましょう。
「キミよりやばい人いるよ」
「めちゃくちゃ絶望してる人、知りたくない?」
「え?」ってなるかもしれません。
その人の名は『フランツ・カフカ』
私も名前だけは、村上春樹さんの著書「海辺のカフカ」で知っていましたが、詳しくは知りませんでした。
しかし、この、
『絶望名人 カフカの人生論』 頭木 弘樹 編訳
を読んで、大ファンになり、そして確信しました。
落ち込んでいる人、悲しんでいる人に、明るい励ましはいりません。
本当に必要なのは、カフカであると。
『絶望名人 カフカの人生論』 頭木 弘樹 編訳
カフカの紹介
1883年~1924年 チェコ出身でプラハのユダヤ人の商家に生まれます。
保険局に勤めながら作品を執筆し、
1908年に「観察」を発表。その後短編「判決」や代表作の「変身」などの有名作品を発表しますが、結核を発症し、40歳で永眠。
作品が注目されたのは、本人の死後で、「審判」「城」「失踪者」等があります。
全ての発言が、ネガティブ。それ以下でもそれ以上でもない
カフカは結婚しませんでした。自分からプロポーズして、自分から婚約破棄を繰り返します。
カフカのラブレター
将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。
将来にむかってつまずくこと、これはできます。
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。
カフカの婚約者への手紙
一番うまく出来ることが『倒れたままでいること』って、大丈夫?
ふつう恋人にこんなラブレターおくりますか? でもこれがカフカです。
ちょっとした散歩をしただけで、
ほとんど3日間というもの、
疲れのために何もできませんでした。
恋愛関係にあった女性への手紙
ちゃんと食べてる? 思わず聞きたくなります。
ぼくは、ぼくの知っている最も痩せた男です。
体力はないし、寝る前にいつも軽い体操をすると、
たいてい軽く心臓が痛み、腹の筋肉がぴくぴくします。
婚約者への手紙
完全に嫌われたがっているような文章ですが、カフカにとっては最高の愛の言葉なのです。
カフカの日記
カフカには自分の気持ちをつづった日記や、小説の発想などをかいた「八つ折り判ノート」という小型のノートがありました。お笑い芸人でいうネタ帳みたいなものでしょう。
しかし、カフカのこのただのネタ帳は、彼の死後、友人が発表して、大反響を呼びました。
画家のゴッホも生前はパッとしない評価しか得られず、死後とんでもない評価を得ていますが、まさしくカフカも同じです。
ぼくは本当は他の人たちと同じように泳げる。
ただ、他の人たちよりも過去の記憶が鮮明で、
かつて泳げなかったという事実が、どうしても忘れられない。
そのため、
今は泳げるという事実すら、ぼくにとってはなんの足しにもならず、
ぼくはどうしても泳ぐことが出来ないのだ。
日記の断片
これは、いわゆるトラウマのことだと思います。彼には恐ろしく多くのトラウマがあり、水泳もその一つにすぎないのです。
彼は、彫刻を彫り終えた、と思いこんでいた。
しかし実際には、たえず同じところにノミを打ち込んでいたにすぎない。
一心に、というより、むしろ途方にくれて。
日記の断片
彼とはカフカ自身の事かもしれません。自分の作品すら、こんな風に見てしまうネガティブさです。
真実の道を進むためには、
1本の綱の上を越えていかなければならない。
その綱は、べつに高いところに張られているわけではない。
それどころか、地面からほんの少しの高さに張られている。
それは歩かせていかせるためよりも、
むしろ、つまずかせるためのものであるようだ。
罪、苦悩、希望、真実の道についての考察
避けようとして後ずさりする、しかめっ面に、
それでも照りつける光。
それこそが真実だ。ほかにはない。
罪、苦悩、希望、真実の道についての考察
カフカにとって真実は、受け入れがたいものだったのでしょう。嫌がっても追いかけてきて、歩こうとするとつまずかせる、拒絶の対象こそが、真実のように言っています。
二人でいると、
彼は一人のときよりも孤独を感じる。
誰かと二人でいると、相手が彼につかみかかり、彼はなすすべもない。
一人でいると、全人類が彼につかみかかりはするが、
その無数の腕がからまって、誰の手も彼に届かない。
日記
もちろん彼とはカフカ自身です。カフカは友人との関わりに希望をもちませんでしたが、その友人が、彼の才能に気が付き、死後何十年もカフカの作品を世に出したのですから、おもしろいものです。
いつだったか足を骨折したことがある。
生涯でもっとも美しい体験であった。
断片
骨折を美しい体験とするところが、こころが病んでます。
まとめ
このようなネガティブ大全開の手紙をもらった婚約者は、カフカに2回婚約破棄させられた後、裕福な銀行員と結婚し、子供も出来て幸せに暮らしたそうです。しかし、カフカからもらった沢山のネガティブラブレターを一枚も捨てることはしなかったそうです。大事に持ち続けました。
もう一人の婚約者は、ユダヤ人ということで、ナチスに捕らわれる時に、わざわざ手紙を友人にあずけて隠したそうです。
もしかしたら、一点の晴れ間もない、ネガティブの言葉は、人を引きつけてやまないのではないでしょうか。
人生に絶望してしまった人、生きていくのが辛い人、死にたいとすら思ってしまう人に、きっとカフカの言葉は届くかもしれません。ぜひ、お手にとってみて下さい。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。